2010-12-25

「女か虎か」

古典の名作で、むろん何度も読んだことのある「女か虎か」を読み返した。今回は山口雅也・編「山口雅也の本格ミステリ・アンソロジー」(から。

編者・山口雅也氏が続編「三日月刀の促進士」につけた後説で、「私もよくパーティで女性にこの話をし、あなたならどちらを恋人に示したか訊くと」という文(大意)を読み、ハタと気づいた。

改めて読み返す。コロシアムに置かれた恋人は、迷うことなく右の扉に向かった。彼とて幾日幾夜、牢の中で苦しんだことだろう。果たして王女の想像のように、他の女が扉から出たとき「命が助かった喜びに、からだじゅうを燃えたたせながら、女の手を取って連れ出」せるだろうか。

むしろ、王女の姿を観客席に見いだしたとき、一屡の望みもはかなく、扉の向こうにいるわけはないと知り絶望したのではないか ?

生き延びることを目当てに、なにも考えずに右の扉に向かったと考えるから不要なサスペンスが生じる。王女の決断に殉じたと考えれば話は簡単。

2010-12-19

忘却力が弱いと

[忘却力]
金を借りたとする。
いまは気兼ねを憶えたが、昔はよく人に金を借りた。金に困ったことがなかったから。
何も言わなくても、貸し借りは憶えているのが当たり前。忘れかたをしらない。

とくにレスポンスがないから、相手が「中川は忘れてるだろ」と怒られたり、縁を切られていたり。
そんなことがあった。


約束の時間とかよく忘れるから信用がないが、記憶する場所が違うのだろうね。


恩や親しみも、忘れない
怒りも忘れないけど、こっちは健康に悪いので理解からの解消に努める

[気持ちが重い]
この言葉がわからないのは、忘れないからだろう。
恩はいつか返せると思ってるから、全部憶えて受け止めてる


受け止めた優しさや親しみをすべて憶えていて、相手の気が変わったころに同じ強さで返しているせいか。
分からないのだから推測だが。

思いと感じる代わりに、いつか返すと心に刻んでいるのかもしれない

2010-12-11

夢の妙な一部

妙な断片だけを夢から持ち帰ってしまった。

設定は八年前か。出先から妻(当時)に電話して「ネットワーク環境と冷房のことを考えたら、xxxで作業するのがあなたに良いと思う」と話したら「私も同じことを考えたから、もうxxxにきている」。

「そうか、楽しんでな」と返事をしたときに、そんな突き放した、自由を尊重しすぎる言い方を常にしていたから夫婦として成り立たなかったのだと、夢をプレイバックして別の返事に置き換え、気が済んだ。

けっこう長い夢のなかで、舞台がそんな頃なのも、人物が出てきたのも、その一シーンだけなのに。なんと返事を置き換えて気が済んだのかだけが思い出せないのが引っ掛かり、頭に残ってしまった。

2010-12-06

あれから何度の新月を

麻雀漫画の前に読んだものに、我が身を移入するのは必然か。

一番に熱狂していたとき、コンビにコミックでリスキーエッジ が再販され、やさぐれていた私と主人公吉岡を重ね、またヒロインの心意気にも自分の心を重ねた。

前の新月の夜、東京にいることすら辛く、フェリーで西に向かいながら、もう二度と反応のない人の心は忖度しないと決めた。

日曜日の夜に、手筋の見直しとして見つけたら買おうと決めていた 打姫オバカミーコ に、喪ったものを想い涙を零さずにはいられなかった。

人が欲しいのではない。人を喪ったと嘆くのではない。信じつづけることが辛くやめた自分が哀しくて。

それでも、そこから過去の思い出がすべて消えるほどの想いがあったとしても。再現ができないものはないのと同じ。惜しんでも返らないものを求めるのは愚か。

喜べ、ヒギンズ教授が自立した女性を作り上げたことを誇ったように。選ぶ強さを示唆し、選ばれなかったならばそれは喜ぶべきこと。選択を与えたのは自分。