2011-03-28

無題

むかし服用していた薬の、ふた月ほど前に掃除していたら出てきたのが。やたらにおいしそうに見えて一錠のんだ。

のんでから名前を読んで検索してみた。セルシン。抗不安、安眠薬。きつすぎて怖いといった記事もある。むかしも頓服としての処方にとどまっていたっけか。おそらく認可されているなかでは最強クラスの向精神薬。

向精神薬がおいしそうに思えるというと、少年時代に傾倒した名作 七胴落とし を思い出す。ものの雰囲気がありありと見え、聴こえるのが当然という世界で、見えなくなる恐怖と戦うはなし。四半世紀を経たいま、私の心許せる友は、見えることに悩みながら見えなくなるのもこわいという人ばかりだ。

自分への間違いさがしばかりしている相手には、どちらの道を得ても不安になるのだろうと矛盾を指し示す。これが正しいのか と縋られると、僕の獲た安心は違う としか応えられない。

なにも信じず、かといって拒否もせず。傲慢(過信) と謙虚(猜疑) のあいだで揺れ動きながら位置を保ちたまえ。それこそが中庸。みえるもの、聴こえる声を全肯定するでもなく、全否定するでもなく。

そんな言葉が、上滑りしそうになって口に出せなければ、いつも私は言うしかない。あなたが自分を信じられるようになるまで、見守っても良いか と。

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